外科・小児外科
外科・小児外科
小児外科は新生児から15歳までの外科的疾患を対象としている診療科です。消化器、呼吸器、泌尿器、生殖器、胸腹部、頭頚部、体表など、きわめて多岐にわたる臓器の疾患を扱っています。生まれつきの形態異常や生まれた後にかかる病気、外傷などに対して手術治療を行いますが、子どもの手術には成人にはない特殊性があります。「身体が小さい」「あらゆる臓器が発育途中で機能も未熟」「精神的・心理的にも発育途上」「成人とは生理的な反応が異なる」「特有の疾患が多い」「幼稚園や学校生活に配慮した治療が必要」といったことが挙げられます。子どもの手術ではこれらの特殊性を十分に熟知し、考慮したうえで的確に治療を行う必要があります。当院ではご両親とともにお子さんの視点に立ちながら、身体にも心にも優しく、かつ高度な医療提供に努めています。
正中頸嚢胞、側頸嚢胞、耳前瘻、梨状窩嚢胞、デスモイド嚢胞、異所性甲状腺、リンパ管腫、血管腫、舌小体短縮症
先天性横隔膜ヘルニア、先天性気管支嚢胞、先天性嚢胞性腺腫様奇形、肺分画症、肺葉性気腫
漏斗胸、鳩胸
先天性食道閉鎖症、先天性食道狭窄症、食道裂孔ヘルニア、胃食道逆流症、肥厚性幽門狭窄症、胃軸捻転、先天性腸閉鎖・狭窄、腸回転異常症、消化管重複症、腸重積症、メッケル憩室、ヒルシュスプルング病、鎖肛・直腸肛門奇形、腸管ポリープ、虫垂炎、胎便異常、胃破裂・穿孔、壊死性腸炎、腸穿孔
胆道閉鎖症、胆道拡張症、膵胆管合流異常、脾腫
鼠径ヘルニア、陰嚢・精索水腫、停留精巣(睾丸)、睾丸捻転
臍帯ヘルニア、腹壁破裂、膀胱外反、臍ヘルニア、臍瘻
神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、肝芽腫、横紋筋肉腫、奇形腫群腫瘍、卵巣腫瘍、未分化胚細胞腫
嚢胞性異形成腎、嚢胞腎、腎嚢胞、重複腎盂尿管、尿管奇形、尿管瘤、膀胱奇形、尿道奇形、膀胱尿管逆流、尿道下裂、埋没陰茎、包茎
肛門周囲膿瘍、外傷、気道・消化管異物
鼠径ヘルニア(脱腸)は小児の1~5%に発生するといわれており、子どもの外科手術の中で最も頻度の高い疾患です。そけい部(股の付け根の少し上)から外陰部(男児は陰嚢、女児は大陰唇)までが膨れたり引っ込んだりする病気です。腫れた部分のヘルニア嚢(袋)の中には小腸、大腸、大網という膜や女児であれば卵巣、卵管などが入り込んでいます。1歳未満の鼠径ヘルニアは自然に治ることもあるといわれていますが、以降は自然治癒が難しくなります。腸が袋の中に入り込んできても、お腹の中に容易に戻る状態であれば緊急性はありません。しかし、脱出した腸が戻らなくなることがあり、この状態を放置すると臓器がむくみ、硬くなります(嵌頓)。嵌頓状態では子どもは痛みで機嫌が悪くなります。ふくらんだ部分は固く、触ると非常に痛がります。次第にお腹が張ってきて嘔吐を起こすこともあります。このようなときは速やかにかかりつけ医に連絡されるか、小児診察が可能な救急病院を受診してください。
陰嚢の中に水がたまった袋があり、陰嚢が大きく膨れる状態になる病気です。基本的に痛みを伴いません。乳児期に多くみられますが1歳ごろまでに自然に治癒することが多いとされ、1歳を過ぎると自然治癒がしにくくなるといわれています。
ときに鼠径ヘルニアと陰嚢水腫の判断は難しいこともありますので、気になることがあれば受診をお勧めします。
臍ヘルニアはへその内側の筋膜に穴が開いて、その穴から腸が突出してくるためにへそがふくらんで見える病気です。いわゆる“でべそ”のことです。通常はへその緒が取れたあとにへそ部分の腹壁の穴がしっかりと閉じますが、その穴が残ってしまうと臍ヘルニアになります。ほとんどの臍ヘルニアは、1歳ごろまでに自然に治癒しますが、なかには1歳を過ぎても穴が閉じずに臍ヘルニアが残ってしまうケースもあります。でべそを防ぐ目的で、綿球(綿の玉)で飛び出したへそを外から押さえて治療する圧迫療法や見た目の観点から手術を行うこともあります。へその形でお悩みの際はご相談ください。
大腸の起点である盲腸(もうちょう)についている虫垂突起が炎症を起こす病気です。いわゆる“盲腸”という名称で広く知られています。4、5歳頃からみられ、小学校高学年から中学生にかけて発症頻度が高くなります。ただし、2、3歳の小児であっても発症することがあり、その場合、きちんと症状を訴えることができずに発見が遅れたり、腹膜炎を起こしたりするなど、重症化につながることもあります。小児の場合、成人でよく言われる「右下腹部の痛み」が最初から出てくるとは限らず、ふだんより元気がない、機嫌が悪い、食欲が落ちる、といった症状から始まることもあります。炎症が進行すると、腹痛以外にも発熱や嘔吐といった症状が起こるようになってきます。
炎症の強度により虫垂炎の重症度は大きく変わるため、身体所見や超音波検査・CTなどの所見を総合的にみることが必要です。治療も進行度によって変わりますが、炎症がそれほど進んでいない場合、手術ではなく、点滴や投薬、食事制限などで保存的に治療されることもあります。
小児の便秘のほとんどは結腸が長い、腸の動きが悪い、腸の水分吸収が多いなど、体質的なものや生活習慣が原因ですが、手術の必要な病気が隠れていることがあります。小児では2~3日以上排便がなければまず受診をお勧めします。
便秘は個々の病状にあわせて治療をしっかりと継続し、気長に治療していくことが肝要といえます。腸にたまった便をなくして、1~2日に1度の排便が続くようにしていきしましょう。
腸閉塞は何らかの原因によって腸管の通過が悪くなっている状態をいいます。症状としては、腹痛、吐き気・嘔吐、おなかの張り、おならや便が出ない、などがみられます。ときには下血や脱水を伴って、ぐったりしてしまうこともあります。
腸閉塞で重要なことは腸管が血行障害を起こしているかどうかです。腸回転異常や中腸軸捻転では、腸管を守るために早期診断と早期治療が必要になります。血行障害を伴う場合、非常につよい腹痛が生じます。血行障害を伴わない腸閉塞では、脱水補正の輸液や薬物療法、小腸内の減圧などで治療します。
精巣は胎生期に腹腔内で発生して、その後、陰嚢内に下降してきます。下降の過程で正常な位置に到達せず停留してしまう状態が停留精巣です。
精巣が正常に機能するためには比較的温度が低い陰嚢内にある必要があります。腹腔内は陰嚢内に比べ、2、3度高い温度環境といわれており、そこに精巣が停留してしまうと精子をつくる細胞が徐々に機能を失い数も減少していきます。不妊や精巣捻転、精巣腫瘍のリスクが上昇する可能性があるため、治療を要します。
皮膚の表面や内部にできる“赤あざ”で、未熟な毛細血管が増殖して現れる良性の腫瘍です。見た目から「いちご状血管腫」とも呼ばれます。出生直後には目立たない状態ですが、数週間で出現してきます。頭から体のどこにでもできますが、首から上が多いとされています。皮膚表面に扁平に盛り上がる「局面型」、半球状に盛り上がる「腫瘤型」、皮膚の下に腫瘤がある「皮下型」の3タイプがあります。多くの場合、2歳ごろまで大きくなりますが、5~7歳くらいには自然に消失していきます。良性の腫瘍ですが、大きくなり体の機能に支障を来したり、出血、潰瘍、感染などのリスクがあったりする場合は、治療が必要となります。
肛門周囲膿瘍は、肛門の周りが赤く腫れて膿(うみ)を持つ病気です。多くは生後1か月くらいから1歳くらいによくみられ、珍しい病気ではありません。皮膚の下にたまった膿が、皮膚から流れ出すことが多く、膿が排出すれば腫れはいったん治まりますが、膿瘍は良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、肛門周囲にも広がることがあります。2歳くらいまでに自然に治ることが多いとされていますが、まれに2歳以上になっても症状を認めることがあります。その際は受診をお勧めします。日常では患部をきれいに洗って清潔を保つようにしてください。